山貓、お斷り（拒載山貓）

作者：あまん　きみこ

注：本課與第44課是系列文，沒有看過的可以先看這一課。

秋になりました。（秋天到了。）

あんなに青々としていた並木の葉も、いつの間にか、黃色に色付いています。（那綠油油的行道樹葉也不知何時(shí)染上了黃色。）

「ここの並木は、銀杏（いちょう）だったのだな。」（“這里的行道樹是銀杏啊?！保?/span>

ちらっと、ガラス越しに見上げた松井さんの制服も、一昨日から、紺色に変わっています。（松井隔著玻璃瞥了一眼上方，他的制服也從前天換為了藏青色。）

並木の終わった竜膽橋の上で、若い男の人が手を挙げているのを見つけて、松井さんは車を止めました。（在行道樹盡頭的龍膽橋上，松井只見一個(gè)年輕男子舉起了手，便停下了車。）

「どちらまで?！梗ā罢垎柲阋侥睦?？”）

「言う通りに行ってください?！梗ā罢埌次艺f的開?！保?/span>

メーターをカチッと立てて、空色の車は走り出しました。（松井咔擦一聲打開了計(jì)價(jià)器，然后駕著天藍(lán)色的車前行。）

まっすぐに、ぐんぐん走ります。（筆直地快速行駛。）

「そこのポストを、左に曲がって?！梗ā霸谀莻€(gè)郵筒邊左轉(zhuǎn)?！保?/span>

松井さんは、ハンドルを回しました。（松井轉(zhuǎn)動(dòng)了方向盤。）

「次に、右?！梗ā敖又肄D(zhuǎn)?！保?/span>

「また、右?！梗ā斑€是右轉(zhuǎn)?！保?/span>

「そのタバコ屋を、左?！梗ā霸谀莻€(gè)煙草店左轉(zhuǎn)?！保?/span>

「次、左?！梗ā叭缓笞筠D(zhuǎn)?！保?/span>

「向こうの花屋を、右。」（“在對面的花店右轉(zhuǎn)?！保?/span>

お客の言う通り、ハンドルを右に回したり左に回したりしているうち、松井さんはどこを走っているのか、さっぱり分からなくなってきました。（松井按照乘客所言，一會(huì)右轉(zhuǎn)一會(huì)左轉(zhuǎn)，漸漸地完全沒了方向。）

見慣れない通りばかりです。（到處都是陌生的路。）

すれ違ったり、追い抜いたりしていた車も、人も、自転車も少なくなって、やがて、すっかりなくなってしまいました。（交會(huì)的車、趕超的車、行人和自行車也漸漸少了，最終，完全沒有了。）

細(xì)い一本道に出ました。（車來到了一條狹窄的道路上。）

両側(cè)には、見渡す限り、金色の稲の穂が、波のように揺れています。（道路兩旁一望無際的金色稻穗如同波浪一般搖晃。）

木の葉が、赤や、黃色や朱色に染まった虹のような林に入りました。葉の間から差してきた光が線になって揺れ、空色の車も、斑（ぶち）に染まって走っていきます。（車駛?cè)肓瞬屎绨愕臉淞?，樹葉染上了紅色、黃色和朱紅色等色彩。從樹葉間照射進(jìn)來的光線搖動(dòng)、行駛中的天藍(lán)色的車也染上了光斑。）

「來たことのない所だな—?！顾删丹螭?、妙に口の中が粘っこいような気持になってきました?！袱长长?、奧楓谷辺りですか。」と、思わず訊ねました。（“從未來過這地方啊?！彼删蟹N好似口中黏糊的心境。不禁詢問道：“這一帶是奧楓谷嗎？”）

するとお客は、喉の奧でごろごろするような、低い柔らかい笑い聲を立てました。（于是乘客的喉嚨深處傳出了咕嚕咕嚕的低柔的笑聲。）

嫌な笑い方だな、とバックミラーを見た松井さんは、「あっ?！工嚷暏虺訾筏饯Δ摔胜辘蓼筏俊＃ㄕ媸怯憛挼男Ψò?，松井如此想著，看向后視鏡，差點(diǎn)“啊。”地一聲叫出來。）

車が、がくっ、と揺れました。（車“咯噔”晃了一下。）

バックミラーの中の男の顔に、焦げ茶の縞の毛が生えていました。（后視鏡中的男人的臉上長著深棕色條紋的毛。）

金色の目、濕った黒い鼻、針金のように、ぴんと橫に張った髭—。（金色的眼睛、濕漉漉的黑色鼻子、如同鐵絲一般橫長的胡須。）

なんと、お客はネクタイを締めた山貓でした。（乘客竟然是系著領(lǐng)帶的山貓。）

松井さんは、力いっぱいブレーキを踏みました。もうもうと土埃を上げて、車が止まりました。（松井用力踩住剎車。塵埃揚(yáng)起，車停下了。）

「降りてくださいよ?！顾删丹螭险瘠晗颏胜い茄预い蓼筏?。聲まで震えそうなのを、やっと堪えていたのです。（“請下車。”松井頭也不回地說道。好不容易忍住了幾乎要發(fā)顫的聲音。）

「こんな所で、降りなくちゃいけないのでしょうか?！梗ā安坏貌辉谶@種地方下車嗎？”）

こう言いながら、お客が松井さんの方に顔を寄せたのか—、生臭い匂いがぷんとしてきました。（乘客大概一邊說著，一邊臉朝松井湊近吧，一股腥味撲鼻而來。）

「だって、あんたは、山貓でしょう?！梗ā耙?yàn)槟闶巧截埌桑俊保?/span>

「でも、この車のどこにも『山貓、お斷り』とは書いてなかったですよ?！梗ā暗牵@輛車哪里都沒有寫‘拒載山貓’啊?！保?/span>

それは、まあ、そうだ、と松井さんは思いました。（松井想道是沒寫。）

「料金を払えば、誰であろうと、同じじゃありませんか?！梗ā爸灰盾囐M(fèi)的話，不管是誰都一樣吧？”）

それもまあ、そうだ、と松井さんはまた、思いました。（松井又想道是這樣沒錯(cuò)。）

「お願(yuàn)いしますよ。何しろ、急いでいるんです。母が病気になったと、電報(bào)が來たのですよ。私は、醫(yī)者なのです。と言っても、まだ、醫(yī)者になったばかりなのですがね?！梗ā鞍萃辛?。因?yàn)槲液芗?。電?bào)通知我母親生病了。我是醫(yī)生。雖說是醫(yī)生，也才剛當(dāng)上醫(yī)生不久?！保?/p>

送ってやろうかな、いや、送るべきだ、と松井さんは思いました。そして、ぱちぱち瞬きをして、自分の頭を、三度叩いてみました。それでも決心が変わらなかったので、はっきり頷きました?！袱いい扦?。送りしましょう。」（松井想道要不要送他呢？不，應(yīng)該送他。于是，松井眨了眨眼，又敲了三下自己的腦袋。決心沒有改變，所以干脆地點(diǎn)頭道：“沒問題。我送你去?！保?/p>

虹の林を過ぎると、白い舗裝道路に変わりました。（穿過了彩虹林，來到了白色的柏油路。）

両側(cè)に、赤い屋根の家が十軒ほど並んでいます。その一番奧の家の前に、青いスカートを穿いた小さな山貓が、額に手を翳して、こちらを見ています。（路兩側(cè)排列著十家左右的紅色屋頂房。在最里面的房屋前，一個(gè)穿著藍(lán)色裙子的小山貓正將手放在額頭遮著光看向這里。）

空色の車が止まると、飛ぶように車のそばに走ってきて、可愛い聲で言いました。「お兄ちゃん、早く。早くってば。」（天藍(lán)色的車停下后，她飛奔到車旁，用可愛的聲音說道：“哥哥，快點(diǎn)。快點(diǎn)啊?！保?/p>

山貓先生は、よしよし、と頷きながら降りましたが、ドアを閉める前に松井さんに言いました。「運(yùn)転手さん。また病院に帰ります。暫く待ってください。」（山貓醫(yī)生一邊頷首一邊下了車，然而，在關(guān)上車門前，他對松井說道：“司機(jī)。我還要回醫(yī)院。請稍微等我一會(huì)兒?！保?/p>

「待たせてすみませんでした。おかげで、早く治りそうです。なあに、私に會(huì)いたいので、少し大袈裟に言っているらしいんですよ?！?span id="2s04ssssssss" class="font-size-16">車に乗り込んだ山貓先生は、笑いながら言いました。さっきの青いスカートの女の子が出てきて、茶色の小さな手を一生懸命振っています。（山貓醫(yī)生乘上車后笑道：“不好意思讓你久等了。托你所賜，母親很快就能痊愈。沒什么，她似乎因?yàn)橄胍娢?，所以稍微說得嚴(yán)重了一點(diǎn)?！眲偛糯┲{(lán)色裙子的女孩出來了，奮力地?fù)]著茶色的小手。）

「一番下の妹です。早く立派な醫(yī)者になって、ここに帰って來なければ、と思いますよ?！?/span>山貓先生も、女の子に手を振りながら、松井さんにこんなことを言ったりしました。（山貓醫(yī)生也一邊朝女孩揮手，一邊對松井說道：“那是我最小的妹妹。我必須早日成為優(yōu)秀的醫(yī)生，然后回到這里?！保?/p>

林を過ぎ、金色の稲の間の道を走り、町に入った時(shí)、松井さんは、わざわざ振り向いてみました。（車駛過林子，駛過金色稻穗間的道路，駛?cè)氤擎?zhèn)的時(shí)候，松井特意回頭看了一下。）

後ろのシートにいるのは當(dāng)たり前の若い男の人。そのお客は片目を瞑って、にやっと笑いながら言いました?！袱郅?、そのタバコ屋を右ですよ?！梗ㄗ诤笞睦硭?dāng)然的是一個(gè)年輕男子。該乘客閉著一只眼，微微一笑道：“喂，在那個(gè)煙草店右轉(zhuǎn)?！保?/p>

「それから、左。」（“然后左轉(zhuǎn)。”）

「そのポストを、右?！工长位丐庋预铯欷毪Δ沥?、ちゃんと、また、竜膽橋に出てきました。（“在那個(gè)郵筒右轉(zhuǎn)?！比绱苏f了很多遍之后，確實(shí)又來到了龍膽橋。）

「その先の大學(xué)病院です?！梗ā斑@前面是大學(xué)醫(yī)院?！保?/span>

やがて空色の車は、堀端の大きな病院の前に、ぴたっと止まりました。（最終天藍(lán)色的車一下子停在了水渠邊的大醫(yī)院前。）

メーターは、いつの間にか、三千八百五十円に上がっています。お金と一緒に、松井さんの手のひらには、葉書を半分にしたぐらいの紙が乗せられました。（計(jì)價(jià)器不知何時(shí)升到了三千八百五十日元。與錢一起遞到松井手心的是大概半張明信片大小的紙。）

「これには、人には読めませんが、こう書いてあります?！荷截垺ⅳ獢啶辍弧长欷?、ドアに貼ってください。もう大丈夫ですよ。」（“雖然人類看不懂，這上面寫道‘拒載山貓’，請把這個(gè)貼在車門上。已經(jīng)沒事了?！保?/p>

先生は、広い階段を、すたすたと駆け上がっていきます。その背中を、ぽかんと見ていた松井さんは、急に窓を開けました。（醫(yī)生急沖沖地走上寬敞的樓梯。呆呆注視著其背影的松井突然打開了車窗。）

顔を突き出して、呼び止めました。「や、や、山。いや、ちょっと—。」（松井探出臉，叫住了對方道：“山、山、山。不對，請留步。”）

「は?！工取⒄瘠攴丹盲可截埾壬?、松井さんは、その小さな紙を、パリパリッと破ってみせました。（“??？”山貓醫(yī)生回過頭后，松井在他面前將那枚小紙哧啦哧啦地撕碎了。）

そして、大聲で言いました?！袱蓼?、いつでも、どうぞ?！梗ㄈ缓?，大聲道：“無論何時(shí)，都可以再來乘我的車?！保?/span>

今度は、松井さんが片目を瞑って、にやっと笑いました。アクセルを踏むと、車は、滑るように走り出しました。（這次是松井閉著一只眼，微微笑道。松井踩了一腳油門，車滑行似地駛動(dòng)出去。）

詞匯

紺色（こんいろ）：紺色、藏青色、帶紫色的深藍(lán)色

すれ違う（すれちがう）：會(huì)車、交錯(cuò)、在幾乎相互擦著的近處相向通過；錯(cuò)過；不一致、有分歧

粘っこい（ねばっこい）：粘粘糊糊、有粘性的；糾纏、無休止

針金（はりがね）：鐵絲、銅絲、鋼絲等細(xì)線狀金屬

堪える（こらえる）：忍受、忍耐、憋住

生臭い（なまぐさい）：腥氣、血腥味；出家人懷有名利之心，不守清規(guī)

ぷん：表示氣味撲鼻或彌漫；怒氣沖沖、氣呼呼地

舗裝道路（ほそうどうろ）：柏油路

翳す（かざす）：蒙上、罩上；放在頭（眼）上遮光

大袈裟（おおげさ）：夸大、夸張、過分

瞑る（つぶる）：閉眼、合眼

葉書（はがき）：明信片

すたすた：三步并作兩步、急沖沖地、一個(gè)勁地往前走

作業(yè)

1.讀課文

2.看圖寫話：